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ご支援事例:若手が辞めていく会社が変わるまで ――評価制度の見直しが組織にもたらしたもの

「何を基準に評価されているのか、正直よく分かりません」

そう打ち明けてくれたのは、入社3年目の若手社員でした。仕事はきちんとこなしている。上司からも特に指摘はない。それでも、自分がどう見られているのか、来年の給与がどうなるのかが、まったく見えない。

こうした声は、決して珍しいものではありません。評価制度の「形」はあっても、現場では暗黙のルールや担当者の主観が幅を利かせている。そういう会社は、規模や業種を問わず、思いのほか多いものです。

今回ご紹介するのは、そうした状況に危機感を持ち、評価制度の見直しに踏み切った会社の記録です。取り組みの前と後で、現場に何が起き、組織がどう変わったのか。その過程を、できるだけ具体的にお伝えします。

同じような状況を抱えている経営者・人事担当者の方に、この記録が一つの参考になれば幸いです。


その会社で起きていたこと

長年にわたって少数精鋭の体制で事業を続けてきた会社でした。現場はベテランが支え、技術や判断の基準は「経験で覚えるもの」として暗黙のうちに受け継がれてきました。

その文化は、ある時期まではうまく機能していました。ベテランが若手の傍に立ち、「こうするんだ」と背中で教える。それで仕事が回っていた時代は、確かにありました。

しかし、組織が若返りを迎えるなかで、少しずつほころびが見え始めます。ベテランの「背中」だけでは伝わらない部分が増え、評価の基準も人によってまちまちになっていきました。

若手社員から上がってきたのは、冒頭のような声です。「評価の基準が分からない」「頑張っても、何をもって認められるのかが見えない」。そして、その不満や不安は、在籍年数が短いほど強く表れていました。

経営として特に深刻に受け止めたのは、若手の離職でした。過去2年間、若手社員の退職が続いていたのです。補充採用をしても、また辞めていく。採用コストと育成コストが積み重なる一方で、中堅層が育たない状況が続いていました。

管理職の側にも、苦しさがありました。評価や育成に対して「苦手意識」を持っており、フィードバックも最低限にとどまっていたのです。評価する側も、「何を見て、何を伝えればいいのか」が明確でなかったのです。

「人が定着しない」「中堅が育たない」。この2つの課題が重なったとき、経営は評価制度の見直しを決断します。


「上のさじ加減」が生まれる構造

なぜ、こうした状況が生まれるのでしょうか。

多くの場合、原因は「評価する側の悪意」ではありません。評価基準が明文化されていない、あるいは存在していても現場に浸透していない。そのことが、評価を「担当者の判断」に委ねる構造を生み出してしまいます。

基準がなければ、評価者は自分の経験や感覚を頼りにするしかありません。それ自体は自然なことですが、受け取る側にとっては「何を見られているのか分からない」「あの人に気に入られるかどうかで決まる」という印象につながります。

現場に「上のさじ加減」という言葉が広まるのは、評価の根拠が見えないからです。昇給・昇格の判断に説明がなければ、社員は「なんとなく決まっている」と感じます。その不信感は、静かに、しかし確実に組織の土台を侵食していきます。

ここで注目したいのは、属人的な評価が組織にもたらす心理的な影響です。

評価基準が不明確な組織では、社員は「成果を出すこと」よりも「評価者に好かれること」に意識が向きやすくなります。正しい努力の方向が見えないため、上司の顔色を読むことが、事実上の「評価対策」になってしまうのです。

これは、若手にとって特に深刻です。経験が浅いほど、「自分の仕事が正しく評価されているのか」への不安は大きい。その不安が解消されないまま時間が過ぎると、「ここにいても先が見えない」という感覚に変わっていきます。

若手が辞めていく理由の多くは、給与水準や仕事の内容だけではありません。「ここで頑張り続ける意味が見えない」という感覚。評価の不透明さは、将来への不安と直結しているのです。

さらに、管理職にとっても属人的な評価は負担です。明確な基準がない状態でフィードバックを行うと、部下からの反発や不満を招くリスクがあります。その経験が積み重なると、管理職は「評価に関わることを避けたい」という意識を持つようになります。こうして、評価が現場に根づかない悪循環が生まれていきます。


見直しのきっかけと、最初に取り組んだこと

評価制度の見直しを決めたとき、最初に行ったのは「制度の設計」ではありませんでした。

まず取り組んだのは、経営層との対話です。「この会社では、どんな人材を評価したいのか」「どんな行動や姿勢が、この会社らしいのか」。そうした問いを丁寧に掘り起こすところから始めました。

制度を作る前に”共通のものさし”を言語化する。この順番が、後の定着に大きく影響します。評価制度は、経営の考え方を現場に届けるための翻訳装置です。経営が何を大切にしているかが曖昧なままでは、どんなに精巧な制度を作っても、運用の場で形骸化してしまいます。

この対話の場では、「理想論」だけでなく「現場の実態」も率直に話し合いました。「今、現場ではどんな評価が行われているか」「管理職は何に困っているか」。経営と現場の認識のズレを丁寧にすり合わせていくプロセスが、制度設計の方向性を定める土台になりました。

対話を重ねる中で、等級制度と人事ポリシーの骨格が固まっていきました。「この会社では、どのレベルの人材に何を期待するのか」が言葉になることで、評価制度を設計するための土台ができあがります。

このプロセスには時間がかかります。しかしここを丁寧にやりきることが、後の「現場への定着」を大きく左右するのです。焦って制度の「形」だけを整えると、運用が始まった瞬間に現場から「うちには合わない」という声が上がります。経営が何を求めているかを全員が共有した状態で制度を作ることが、長く使われる評価制度をつくる条件です。


評価制度の設計:「行動・スキル」2軸という選択

土台が整ったところで、評価制度の設計に入りました。

この会社が採用したのは、「行動・スキル」の2軸を評価の基準とする枠組みです。

行動は、業務上で実際に取った行動や対応を指します。成果だけでなく、「どう動いたか」を見る視点です。成果は外部環境にも左右されますが、行動は本人のコントロール下にあります。若手社員にとっては、「何をすれば評価されるか」が具体的に見える基準になります。

たとえば、初級の等級では「上司の指示のもと、決められた手順を正確に実行できる」「不明点があれば、放置せず確認・報告ができる」といった行動水準が設定されます。中堅の等級になると「自ら課題を発見し、改善提案を行動に移せる」「後輩の業務をフォローしながら自分のアウトプットも維持できる」といった水準に引き上がります。等級ごとに「この段階ではこういう行動が求められる」という記述が揃うことで、評価者も被評価者も、同じ言葉で対話できるようになります。

スキルは、職種や等級ごとに求められる専門的な能力・知識です。「このレベルでは、これができることが前提」という基準を等級ごとに定めることで、育成の目標としても機能します。「今の自分には何が足りないのか」「次の等級に上がるには何を習得すればいいのか」が明確になることで、社員自身がキャリアの見通しを持てるようになります。

この2軸を採用した理由は、評価と育成をつなぐためです。「評価される=給与が決まる」だけでなく、「評価される=自分の成長の方向が分かる」という体験を社員に届けることを意図して設計しました。

評価制度が「育成の地図」として機能するとき、社員は評価を受けることを恐れなくなります。「自分の現在地が分かる」「次に何をすればいいか分かる」。そういう安心感が、組織全体のエンゲージメントを底上げしていきます。


制度より難しい、現場への定着

制度が完成したとき、それはまだスタートラインにすぎません。

多くの評価制度が機能不全に陥る原因は、「作ったけれど使いこなせない」という運用の問題にあります。どんなに丁寧に設計された制度も、評価者が使い方を理解していなければ、現場では形だけのものになってしまいます。

この会社で重点を置いたのは、管理職への支援です。

評価面談の進め方、フィードバックのポイント、部下との対話の型。こうした「やり方」を、管理職向けに具体的にガイドしました。制度があっても、運用する人間の「どうやればいいのか」が曖昧なままでは、面談は形骸化します。

面談の構成も整理しました。評価期間中の行動を振り返る「事実の確認」、評価基準に照らした「評価の説明」、次の期間に向けた「期待の伝達」という流れを型として示したことで、管理職は「何を、どの順番で話せばいいか」を迷わずに進められるようになりました。

特に意識したのは、フィードバックの質です。「良かった・悪かった」を伝えるだけでなく、「なぜそう評価したのか」「次に向けて何を期待しているのか」を言葉にする練習を重ねました。フィードバックは、評価を届ける行為であると同時に、育成の機会でもあります。

フィードバック前後の変化は、部下の反応にも表れました。以前は「また評価の季節か」と受け身だった若手が、「自分はどう評価されたんだろう」と面談を前向きに待つようになった、という声が管理職から上がるようになりました。

管理職自身も、最初は「評価が苦手」という意識を持っていました。それは、基準がなかったからこそ生まれた苦手意識でもあります。「何を見て、何を伝えればいいか」が明確になることで、管理職の評価への向き合い方も少しずつ変わっていきました。「評価が怖い」から「評価で育てられる」へ。この意識の変化が、現場の空気を変えていきました。

制度設計だけにとどまらず、運用現場への伴走を続けたことが、この取り組みの核心です。


支援前と支援後で変わったこと

取り組みを経て、現場にはいくつかの変化が生まれました。

まず、評価の基準・観点が明確になったことで、社員の納得感が変わりました。 「何を見られているか分からない」という声がなくなり、「自分がどこに向かえばいいか、少し見えてきた」という感想が出るようになりました。評価に対する不満が「あの人に気に入られるかどうかだ」から「頑張れば報われる」へと変わっていくのは、基準が言語化されることで初めて生まれる変化です。

次に、面談の頻度と質が上がりました。 以前は最低限にとどまっていた管理職のフィードバックが、定期的な対話の機会として機能するようになりました。「どう評価したか」だけでなく「次に何を期待しているか」まで伝えられるようになったことで、若手の成長支援が「やらされ仕事」から「マネジメントの中心」へと変わりつつある手応えがありました。

離職率にも改善の兆しが見えてきました。 若手社員が「頑張れば報われる」「何を目指すべきか見えた」と語るようになり、現場のチームワークにも変化が出てきたという声が経営から届きました。採用と離職の繰り返しに消えていたコストと時間が、育成に向けられるようになってきた実感があります。

そして最も印象的だったのは、評価に対する経営・管理職・社員それぞれの意識の変化です。取り組み前、評価は「給与を決めるための作業」でした。取り組み後、評価は「人を育てるための仕組み」として機能し始めていました。

お客様からいただいた言葉が、この変化を端的に表していました。「今までは評価=給与を決める作業という感覚でしたが、今は”人を育てる仕組み”として活用できています。若手の目の色が変わったのを感じますし、今後は中堅層の定着と育成にもつなげていけそうです」。


この事例から見えてきたこと

この事例を振り返ると、評価制度の見直しにおいて重要だったのは、次の3点です。

1. 制度を作る前に、経営の考え方を言語化すること 評価基準は、経営が「何を大切にするか」の翻訳です。この土台がなければ、制度はすぐに形骸化します。対話のプロセスを省いて形だけ整えた制度は、現場から「うちには合わない」と言われる運命をたどります。

2. 評価と育成をつなげて設計すること 評価が「給与を決める作業」にとどまる限り、社員の行動は変わりません。「評価される=成長の方向が見える」という体験を設計することで、評価が組織を動かす力を持ちます。2軸(行動・スキル)の設計は、そのための一つの有効な枠組みです。

3. 運用現場への伴走をやめないこと 制度は作った瞬間から劣化が始まります。評価者が使いこなせるよう、フィードバックの型を整え、管理職の「やり方」を支えることが、定着の鍵です。「制度を作って終わり」ではなく、「運用が根づくまで伴走する」という姿勢が、現場の変化をつくります。

評価制度の問題は、多くの場合「制度の中身」よりも「運用の仕方」にあります。どんなに優れた設計も、現場で活かされなければ意味を持ちません。

あなたの会社は、この3点を満たせていますか?

以下のような状況があれば、評価制度の見直しを検討するタイミングかもしれません。

– 「何を基準に評価されているか分からない」という声が現場から上がっている – 昇給・昇格の決定に、説明のできる根拠がない – 管理職が評価面談を「こなすべき作業」として捉えている – 若手の離職が続いており、「定着しない」という感覚がある – 評価制度はあるが、形骸化している実感がある

一つでも当てはまる項目があれば、現状の評価制度が「給与の根拠」にとどまっている可能性があります。


おわりに:評価が”育てる仕組み”になるとき

評価制度の見直しは、それ自体が目的ではありません。

目指すのは、社員が「頑張り続ける意味」を感じられる組織です。若手が「何をすれば認められるか」を理解し、管理職が「どう育てればいいか」を言語化できる。そのための土台として、評価制度があります。

「人が定着しない」「中堅が育たない」という課題を抱えている会社にとって、評価制度の見直しは一つの有効な手段です。ただし、制度を整えるだけでは不十分です。運用現場に根づかせるまでの伴走があって、はじめて変化が生まれます。

今回ご紹介した事例が、同じような課題を感じている経営者・人事担当者の方にとって、何かしらの参考になれば幸いです。評価制度の設計・見直しについてのご相談は、お気軽にお問い合わせください。


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メタタイトル(32字以内) 若手離職を止めた評価制度見直しの全記録

メタディスクリプション(120字以内) 「評価基準が分からない」という若手の声を受け、評価制度を見直した会社の実例を紹介。行動・スキル・姿勢の3軸設計と管理職への伴走支援により、離職率改善・納得感向上を実現したプロセスを解説します。

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