「採用しても辞める」「育てても成長しない」「成果が安定しない」──そんな悩みの根本には、会社と社員それぞれの希望の「順番」を見落としていることがあります。先に社員の希望を満たす環境を整えることで、会社の希望は自ずとついてくるという構造があります。
会社が求める4つの希望とは何か
まず、会社が社員に対して持っている希望を整理してみましょう。これらは「再現性」という言葉で表すことができます。再現性とは、好ましい状況を何度でも生み出せる状態のことです。
会社が求める再現性は大きく4つです。
①採用の再現性(欲しい人材を欲しい時に確保できる)、
②労務提供の再現性(優秀な人が辞めずに働き続けてくれる)、
③成長の再現性(社員が変化し続けて成長してくれる)、
④成果の再現性(社員が継続的に成果を出し続けてくれる)です。
これらはどれも、経営者であれば当然のように望むことではないでしょうか。しかし、これらを「要求するだけ」では、なかなか実現しないのが現実です。
社員が求める4つの希望とは何か
次に、社員側の視点に立ってみましょう。社員もまた、会社に対して4つの希望(再現性)を持っています。
①処遇の再現性──一部の人の好き嫌いで評価されるのではなく、同じ成果を出せば同じ処遇が約束されている状態。
②成長の再現性──この会社で働き続けることで、なりたい姿・在りたい姿になれるキャリアの展望がイメージできる状態。
③経済的再現性──会社の業績が安定していて、賞与・昇給を含めた経済的利益を継続して得られる状態。
④心理的安全の再現性──自分が尊重・大切にされていると感じ、会社が居場所の一つとなっている状態です。
これらは「贅沢な要求」ではありません。同じ時間を働くのであれば、こうした環境で働きたいと思うのは、ごく自然な感情です。
順番が大切──社員の希望を先に満たすと、会社の希望は自ずとついてくる
会社と社員それぞれの希望を並べると、興味深いことに気づきます。社員の希望が満たされるほど、会社の希望も自然と実現していくという対応構造があるのです。
処遇が公平であれば、社員はモチベーション高く成果を出し続けてくれます。成長できる環境があれば、社員は会社とともに変化し続けてくれます。経済的に安定していれば、優秀な人材が辞めずに長く働いてくれます。心理的安全が守られていれば、「ここで働き続けたい」という口コミが広がり、採用にも好影響をもたらします。
つまり、順番が大切なのです。会社の希望を先に実現しようとするのではなく、まず社員が「ここで働き続けたい」と感じられる環境を整えること。その積み重ねが、会社の求める再現性を一つひとつ実現していきます。
支援事例──「順番」を意識した会社が変わったこと
あるサービス業の企業では、長年にわたって人事評価制度が慣習に依存し、実質的に機能していない状態が続いていました。特に成果を出していた若手社員ほど「頑張っても処遇が変わらない」と感じ、離職するケースが目立っていました。
まさに、社員の「処遇の再現性」への希望が満たされていなかったために、会社が求める「成果の再現性」も「労務提供の再現性」も崩れてしまっていたのです。
そこで人事ポリシーの再設計から着手し、等級・評価・賃金制度を一体的に整備しました。「何を評価して、何に報いるのか」を明確にすることで、社員の納得感が高まり、ハイパフォーマーが意欲的に働けるようになりました。制度を整えることは、社員への「あなたの頑張りをちゃんと見ています」というメッセージでもあります。
まとめ──今日からできる「順番を意識した」組織づくり
会社には会社の希望があり、社員には社員の希望があります。この二つは別物ですが、社員の希望を先に満たしていく姿勢こそが、会社の希望を実現する最も自然な道です。
「採れない・辞める・育たない」という悩みは、実は社員の希望が満たされていないことへのサインかもしれません。順番を意識するだけで、組織は少しずつ、でも確実に変わりはじめます。